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概要

AWS MarketplaceはSaaS製品向けに複数の価格モデルを提供していますが、本掲載ガイドが前提とするのは「SaaS Contract」モデルのみです。本ガイドはSaaS Contractを前提に解説します。
変更不可: 限定公開後に価格モデルを変更することはできません。慎重に選択してください。

SaaS Contract とは

固定料金の契約モデルです。顧客はあらかじめ決めた契約期間(月/1年/2年/3年など)と数量を契約し、前払いまたは分割で支払います。利用可否はエンタイトルメント(GetEntitlements)で判定し、従量課金のメータリングは不要です。

特徴

  • 期間・数量を固定した予測可能な契約
  • 前払いによるキャッシュフロー改善
  • エンタイトルメントベースのアクセス制御
  • 大口・エンタープライズ顧客に適合

適用シナリオ

  • エンタープライズライセンス
  • 固定ユーザー数・機能セット別プラン
  • 長期契約による割引
無料トライアル: SaaS Contractでも無料トライアル期間を設定できます。

エンタイトルメント検証(実装の考え方)

SaaS Contractでは、顧客のアクセス権を AWS Marketplace Entitlement Service の GetEntitlements で検証します。従量課金のメータリング(BatchMeterUsage)は使用しません。
詳しい実装はインテグレーション実装を参照してください。

価格設定例(Contract)

複数年契約による割引(例: 2年10%、3年20%)も設定できます。

価格ディメンションの設計

各ディメンションは個別に価格を設定できる機能・サービス単位(例: ユーザー数、スキャンしたホスト数)です。AMMPのウィザードで以下のフィールドを定義します。
API nameは作成後に変更できません。 エンタイトルメント検証で使用する重要な識別子のため、命名は慎重に行ってください。
  • 契約期間は Monthly / 1年 / 2年 / 3年 から1つ以上を選択(プライベートオファーは最大144ヶ月のカスタム期間も可)。
  • 期間は全ディメンションで揃える必要があります(例: ReadOnlyUsers に年額を設定するなら AdminUsers にも年額が必要)。
  • 契約タイプは「複数オプションから数量を選択」または「複数ティアから1つを選択」のいずれか。

価格変更の制約

いずれかのディメンションで値上げを行うと、以後 少なくとも90日間は価格更新オプションが使えなくなります。値下げと値上げを同時に行う場合は、値下げを先に実施してください。価格変更は現顧客への通知後、90日経過後の翌月1日に発効します。

契約ライフサイクル(終了・キャンセル)

契約終了時

  • SaaS製品は entitlement-updated 通知を受け取り、GetEntitlements は空のレスポンスを返します。
  • 従量課金分がある場合、残使用のメータリング猶予は 1時間です。経過後はメータリングレコードを送信できません(Contractのみの場合はメータリング自体を行いません)。

キャンセル・返金時

  • 顧客は 購入後48時間以内に AWS Support 経由でキャンセル・返金を申請します。全額または日割りの返金は通常 3〜5営業日で処理されます。
  • 製品はEventBridge経由でキャンセル通知を受け取ります。
  • 顧客が製品内でキャンセルを希望した場合は、AWS Marketplaceへ誘導してください。将来の課金を確実に止めるには、顧客がAWS Marketplace側でキャンセルを確定する必要があります。

Express Private Offers(EPO)

Express Private Offers(EPO)は、AWS Marketplace のリスティングを訪れた顧客に対して、AI エージェントがセラー定義の価格ルールに基づき、パーソナライズされたプライベートオファーを数分以内に自動生成する機能です。手動でのオファー作成を不要にし、商談成立までの時間を短縮します。
新機能(2026年6月〜): EPO に Co-sell 連携が追加され、AWS 社内セールスチームが対象顧客へ EPO リンクを自動送信できるようになりました。設定は AWS Marketplace Management Portal(AMMP)から行い、API 統合は不要です。

対象となる価格モデル

Deshima が現状取り扱う SaaS Contract のリスティングで EPO を利用できます。SaaS Contract with pay-as-you-go での EPO 利用は Deshima の対応範囲外です。

仕組み

  1. セラーが AMMP で価格ルール・ディスカウントロジック・顧客の適格基準を定義
  2. 顧客がリスティングでプライベートオファーをリクエスト(「Get express private offer」)
  3. AI エージェントが顧客を自動審査・適格判定
  4. 条件に合致する場合、数分以内にオファーを自動生成・提示
  5. 複雑な案件は、セラーの営業チームへ自動的にルーティング

主なメリット

  • オファー生成の自動化: 手動でのプライベートオファー作成が不要に
  • 「EPO Enabled」バッジ: リスティングに表示され、AWS セラーからの可視性・レコメンデーションスコアが向上
  • Co-sell 連携: AWS との共同販売パイプラインを通じた商談機会の拡大
  • 追加の技術統合が不要: 生成されるオファーは標準のプライベートオファーとして処理されるため、既存のエンタイトルメント検証やフルフィルメント実装の変更は不要

セットアップ

AMMP で以下を設定し、EPO を有効化します。
  1. 基本価格ディメンション(プラン・数量単位)の定義
  2. オファーパラメータ(契約期間、EULA)の設定
  3. ディスカウントロジック(割引条件・上限)の構成
EPO は掲載完了後に任意で有効化できるオプション機能です。既存リスティングに影響を与えることなく設定できます。EPO は標準的で繰り返し発生する取引に最適化されており、複雑なエンタープライズ案件は従来どおりセールスチームによる対応が必要です。
詳細: Want more deals from AWS sellers? Enable Express Private Offers

プライベートオファーの支払条件(Net Payment Terms)

新機能(2026年8月): プライベートオファー作成時に、支払条件(Net Payment Terms)を設定できるようになりました。すべての商用 AWS リージョンで利用可能です。
  • セラーが直接作成するプライベートオファーと、CPPO(Channel Partner Private Offer)の両方に対応します。
  • CPPO では ISV が最大支払条件を設定し、チャネルパートナーはその上限以下の条件のみを顧客に提示できます(例: ISV が Net 60 を上限に設定した場合、パートナーは Net 30 / 45 / 60 を選択可能)。
  • 設定しない場合は、従来どおりバイヤーと AWS の支払条件が適用されます。購入者はオファー承諾前に支払条件を確認できます。
詳細: Seller Net Payment Terms(AWS公式)

プライベートオファーの自動更新

2026年9月より、AWS Marketplace はプライベートオファーの**自動更新(auto-renewals)**に対応しました。すべての商用 AWS リージョンで一般提供され、契約課金(Contract 課金)を利用するダイレクト・プライベートオファーに適用されます。これは Deshima が前提とする SaaS Contract と同じ契約課金モデルであり、追加のセットアップやオンボーディングは不要です。
  • 更新時の価格オプション: 価格変更なし(フラット更新)/固定率アップリフト(複利。例: 10,000に対し210,000 に対し 2% → 10,200 → $10,404)/範囲指定アップリフト(最小率・最大率を指定し、更新判断期限までにセラーが最終率を確定。CPI・インフレ連動などに有用)
  • 更新回数: 「無制限」または「回数指定(決められたサイクル数)」を選択可能
  • 通知とオプトアウト: 更新前に売り手・買い手の両者へ通知され、更新判断期限までは双方がオプトアウト可能。オプトアウトした買い手は期限内であれば再度オプトインできます
  • 発注書の引き継ぎ: 発注書は更新時に自動で引き継がれます
  • システム連携: 更新イベントは Amazon EventBridge 経由で CRM・請求・アラート等へ連携でき、AWS User Notifications でメール・Slack・Teams へ配信できます
設定はセラー側が AMMP で行い、買い手は AWS Marketplace Console で管理します。既存顧客との長期契約・更新運用の効率化(予測可能な収益の確保)に活用できます。
詳細: Private offer auto-renewals: Scale predictable revenue with AWS Marketplace

Concurrent Agreements(同一製品の複数契約)

Concurrent Agreements(2026年6月〜): SaaS Contract では、同一 AWS アカウントによる同一製品の複数契約(Concurrent Agreements)がサポートされます。2026年6月1日以降の新規製品はデフォルトで有効、既存製品はオプトインで有効化できます。詳細はインテグレーション実装を参照してください。

参考: AWS Brazil 2P Distribution Program(ブラジル向け再販)

AWS Brazil 2P Distribution Program は、ブラジル国外の ISV が AWS Brazil にライセンス再販権を付与し、AWS Brazil が販売者(seller of record)としてブラジルの顧客へ SaaS ライセンスを再販する仕組みです。ISV は AWS Partner Central または公開 API で配布承認(distribution authorizations)を作成します。AWS Brazil がプライベートオファーを作成し、買い手向け価格を決定、請求書を自動生成、ブラジルの税を計算・源泉徴収したうえで支払いをディスバースします。ISV は Seller Insights ダッシュボードで取引・支払状況を追跡できます。ブラジルの買い手は USD 建てのプライベートオファーを閲覧し、請求日の為替レートで BRL 建てで請求され、クレジットカードまたは Pay by Invoice(PBI)で支払います。
本プログラムは AWS 側の再販・請求代行(seller of record)に関する仕組みであり、Deshima が取り扱う価格モデル(SaaS Contract)やそのスコープを変更するものではありません。ブラジル市場への展開を検討する場合の参考情報としてご確認ください。
詳細: AWS Brazil automates distribution of non-Brazilian software product licenses to Brazilian customers

その他の価格モデル(概念)

参考として、AWS Marketplaceが提供するSaaS製品の価格モデルは以下の4種です(公式の正式名称)。本掲載ガイドは現時点で SaaS Contract を前提に解説しており、これらのモデルによる掲載手順は取り扱っていません。
旧称・非正式名で「Subscription」「Contract with Consumption」と呼ばれることがありますが、公式の正式名称は上表の通りです。
参考: AWS が SaaS 価格モデルに関する詳細ブログシリーズを公開しています。Subscription モデルの固定レート従量課金やティアード従量課金の設定パターンについては、SaaS subscription pricing models in AWS Marketplace(2026年8月公開)で詳しく解説されています。

次のステップ

インテグレーション実装

Contractのエンタイトルメント検証など、API統合の実装方法